Gina世代憧れの輝いているあの人に密着&インタビューするこの企画。今回は業界人からも支持率の高い人気の美容室「SYAN」代表・野々口祐子さんの仕事論と、とある一日に迫ります。
華やかなイメージとは裏腹に、朝も早く夜も遅く、一日中立ちっぱなし……などハードな美容師の仕事。ゆえにサロン業界での女性オーナーの存在は珍しいと言われていた時代があったそう。今月はそんな業界の常識を打ち破って、10年前に表参道にサロン『SYAN』を設立。代表でありながらも、美容師として現場に立ち続ける野々口祐子さんにフィーチャー!
お客様はもちろん、働く美容師も幸せでいられる環境を作りたい」
美容室「SYAN」代表 野々口祐子さん
両親からの猛反対を押し切り美容師の世界へ。『SHIMA』、『KOKORO』と2つの人気サロンを経て独立。2013年に設立した『SYAN(シアン)』は野々口さんと、スタイリストでありパートナーとの共同経営。世界に誇る美容師を表彰する美容師のミシュランガイド「カミカリスマ2023」にて2つ星を受賞。 @yuko_nono
働いていた美容室が急に倒産! 理想のサロン像も膨らんでいた
──女性で経営者になる人は少ないと言われる業界で、自分でお店を持ちたいと思ったきっかけはなんですか?
「実は始めからお店を持ちたいと思っていたワケではないんですよ。10年前に働いていた『KOKORO』という原宿にあった美容室が、急に倒産してしまって。でも、また新たにどこかで働くという気持ちにもなれず……。そしてちょうどその頃、30歳という節目の年でもあり、変化を起こしたい! という思いや、“私ならこんな店を作りたい!”という理想像が膨らんでいたタイミングでもあったんです」
──野々口さんの理想のサロン、それはどんなものですか?
「それまで大規模、小規模、2つの形態が異なる対照的なサロンで働いていた経験から、そのサロンの良いとこ取りができたら、と思っていました。それはチームワークがありながらも、スタッフの幸せを願うことができるサロン。お客様をキレイに、オシャレに、美しくするのは当たり前ですが、それ以前に働く美容師たちも幸せでいられる環境を作りたかったんです。
また、それを叶えるには、オーナーとスタッフが、より近い関係を築かなければ実現できないことだな、とそれまでの経験から感じていました。店舗展開すれば利益は追求できるかもしれないけれど、それによってオーナーとスタッフとの関係性に距離ができてしまうことは避けたい。経営をしたいというよりは、良いチームを作りたい! という感覚ですね」
“美容師はハードで離職率も高い”両親の猛反対を押し切り美容学校へ
──タイミングと理想の美容室への強い思いが重なって『SYAN』が実現したんですね。でも、大きな決断でもあるのですごいです!
「実は私、両親に啖呵を切って大阪から東京に出てきているんですよ(笑)。美容学校に行くのも、東京で美容師になることも反対されていたので、強い覚悟と意志はあるんです」
――ご両親の反対にも負けずに、突き進むくらい美容が好きだったんですね!
「そうなんです(笑)。一日休みがあれば、部屋に引きこもって、自分をモデルにヘアメイクをして遊んでいました。楽しくて無心になれましたね。そして、高校2年生。進学を決める段階になり、ヘアメイクか建築家で迷いながらも、一番楽しいと感じていたヘアメイクに決意を固めました。でも保守的な考えを持っていた両親は猛反対!! 大学に行って会社員になることが幸せ、美容師はハードで離職率も高いからと、美容専門学校に入学するギリギリまで大学進学をすすめられました。そんな両親も今となっては応援してくれていますが(笑)」
──美容師って人気職に見えて離職率も高いんですね。辛かった思い出などもありますか?
「うーん、どれも必然だと思っているので辛くは感じていないんです。業界を見ていると、人間力が高い人が売り上げを取っていると感じていたので、良い美容師になるためにもっと経験をして、もっと人間力を上げたい! としか思っていなかったです」
ビジュアル作りやイベントの結果、美容師業との相乗効果に
──『SYAN』は美容室という従来の形態にとらわれず、ビジュアル撮影やフリマイベントなどを定期的に行なっていることも特徴的ですよね。
「正直、自分が飽きっぽくて新しいものを取り入れることが単純に好き、という理由だったりもします(笑)。でもイベントやビジュアル作りをすることで、日々の美容師の仕事とメリハリが生まれ、それが相乗効果になってスタッフもハッピーでいられているような気がします。特にオープン当初からこだわっている『SYAN』のビジュアル作りは、打ち出したい女性像をカタチにしてく様子を、後輩の子たちが見て体感できる現場でもあります。刺激やモチベーションにもなると思うので、脈々と繋げていきたいですね」
──お店をまとめ上げる代表として、日々意識していることはありますか?
「今は私自身、なるべく意見をしないようにしています。それを店長クラスのスタッフに委ねることで、みんなが脳をフル回転させて考え、セッションしたり、コミュニケーションを取るんです。それがきっとスタッフの成長にもなりますから。まだまだ私も頑張るんですが、スタッフがどんどん『SYAN』の第2、第3の顔となってほしいなと願っています。あとは、“自分はこうだ”みたいな大切に培っている部分を持ちながらも、常に新しい視点を取り入れてアップデートしていきたい。スタッフに良い影響を与えられる存在でありたいとも思っています」
──最後に、Gina読者へ一言お願いします。
「中身は外見にじわじわと滲み出てくるもの。だから日々を精一杯生きること、コツコツと続けることが大切だと感じています。私もいろんな角度から物事を見て、『SYAN』が掲げる、芯がありながらも柔軟でしなやかな女性でありたいです。自分らしく、がんばりましょう!」
野々口さんにとって仕事とは??
「仕事」がない生活は考えられません! プライベートももちろん充実させたいとは思いますが、私の場合、それ以上に仕事で満たされることの方が多いんです。
野々口さんの1日に密着!
人気サロンということもあり、昼間は休憩する間もなく忙しく働く野々口さん。だからこそ朝晩のリラックスタイムは必須!
8:00|出勤2時間前に起床! ご飯を食べてのんびり整えます
8時起床。朝はのんびりと過ごします。お昼休憩をとれない日も多いので、朝食はしっかりととり、お客様からいただいたよもぎ茶を飲みます。仕事を頑張るためにもリラックスタイムを満喫。
10:00|スタッフ総勢11人で輪になり朝礼をします
サロンがオープンする1時間前に出勤。サロン内の掃除を済ませ、連絡や注意事項をスタッフ全員で確認し合う朝礼の時間。営業中はみんな和やかムードですが、朝の朝礼はピリッとすることも(笑)。
11:00|営業スタート! お客様に集中します
予約がびっしりの日は、開店から20時の閉店までがあっという間! 休憩する時間も忘れ接客しています。お客様とのコミュニケーションは、美容やグルメ、旅行情報を交換する楽しい時間!
21:30|夕飯はなるべく夫と時間を合わせていただきます
20時半に退社し、夕食は21時半頃。夫婦それぞれに忙しく働いているので、時間を合わせるのが難しいのですが、夜はなるべく一緒に食事をとるように。食事中も仕事の話が多いです(笑)。
23:30|毎日必ず湯船に浸かってパワーチャージしています
お風呂は、保湿力が優秀なモイスティーヌの入浴剤と、浴室用美容器のモイスチャーバスを入れてのんびりと。夜サウナ(自宅には前家主から引き継いだサウナが!)は5分2セットがお決まり。1時半頃就寝。
仕事の相棒、紹介します!
バッグも中身も超ミニマム!
最近は、FUMIE TANAKA×F/CE.コラボのショルダーバッグを愛用。中には、財布と名刺入れ、リップ、スマホくらい。エルメスのお財布は「これに見合った女性になろう!」という前向きな気持ちになれます。またエルメスの名刺入れの中には、仕事への敬意を込め、名刺とともに毎年足を運ぶ伊勢神宮でいただいたお札を入れています。シザーケースは、『SYAN』オープン時のスタッフからのプレゼント。刻印された『SYAN』の文字が薄くなるほど愛用(笑)。
ミニマム、BUTお守りは4つ!?
一見、荷物少なめのバッグですが、お守りはたくさん入っています(笑)。「よし、頑張ろう!」と気合いが入る、神社は私にとってのパワースポット。右から晴明神社、“仕事”と“小判型”は新屋山神社、“ハサミ”は御髪神社で購入しました。
Gina 2023 Spring
Photo_Makiko Obuchi Edit&Text_Mio Nemoto ReEdit_Ayaka Ono(Gina)