Gina世代憧れの輝いているあの人に密着&インタビューするこの企画。今回は写真集『脱いでみた。』シリーズでも話題のフォトグラファー・花盛友里さんに密着。
さぞ華やかな経歴かと思いきやアシスタント時代の苦労話や、鳴かず飛ばずで貧乏だった独立期、まさかの危機まで……波乱万丈のお仕事人生を語ってくれました。
※ この記事はGina 2022 Summerの内容を再編集したものです。
写真集『脱いでみた。』『寝起き女子』が話題! 女の子の“ありのまま”を一番カワイく撮る
フォトグラファー・花盛友里さん
1983月生まれ・39歳。大阪府出身。写真専門学校を卒業後、東京のスタジオに3年勤務。24歳のときにN.Y.に半年滞在し、帰国後はロケアシスタントを経て事務所所属のフォトグラファーとなる。その後独立し20
09年にフリーランスに。プライベートでは2013年に結婚し翌年出産。2児の母。
写真専門学校からスタジオへ。ここまでは王道だったけれど……
———写真集『脱いでみた。』や『寝起きシリーズ』、さらに一般人のヌードを撮る『NUIDEMITA』という新しいコンテンツまで、人の一番ステキな瞬間を切り取った写真で話題の花盛さん。一体どんな経歴でフォトグラファーに?
「写真は中学生くらいのときから好きだったんです。だから地元の写真専門学校で写真を学んで、その後は上京して東京の有名なスタジオでスタジオマンとして働きました。まさに王道な進路ですよね。でもそこからちょっとはずれてしまって。スタジオマンを始めてちょうど3年経ったある日、急に辞めようって思ったんです。もう十分頑張ったし、学べることも学んだなって。今よりもずっと過酷な現場だったし、怖いフォトグラファーさんもいたりしたので、疲れ切ってしまったのもあって。スタジオを辞めると同時にニューヨークに行ったんです。写真を学びにではなく、ただ遊びに行ってしまったんですよ(笑)半年間も! すごく疲れていたんだと思います。
ニューヨーク生活がスタートして、しばらくはアパートを借りながらプラプラして過ごしました。せっかくの海外滞在中に作品撮りでもすれば良かったんですけど、そんなことも特にせず。今考えるともったいないですよね(笑)! それで手持ちが10ドルしかなくなったときもあったんですが、高校時代の留学で英語には自信があったのと、元バックパッカーなので海外でもなんとかする能力は高かったのかもしれません。とにかく私、ポジティブなんですよ。
その後日本に帰国して、最初は海外フォトグラファーの撮影アシスタントをしながらブック(自分で撮りためた作品集)を編集部に見せに行くなど営業をしながらフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせました」
独立後、まさかの貧乏暮らし。所持金1000円で向かった先は?
———普通はスタジオ卒業と同時にフォトグラファーさんに弟子入りする方が多いですよね。弟子入りしないでデビューしたのはなぜですか?
「“弟子入りしたい師匠がいなかった”と言ったら、生意気に聞こえてしまうんですが、私が欲しいのは結局、人からは学べないセンスの部分だったから。
それから事務所に所属した時期も含めて4年間くらいは本当に泣かず飛ばずでした。なかなか仕事が入らなかったから平行でアルバイトもしていました。ファッション雑誌の仕事でも服やモデルページではなくて、最初は読み物のモノクロページの3cmくらいのカットで撮影料も生活するには厳しくて。家賃の支払いが遅れ、光熱費が遅れたことも。そして千円札を握りしめて……アシスタント時代の仲間と飲みに行ってました(笑)。その頃、同業の友人もみんなお金がなかったので助け合いましたね。あとはハローワークに並んだこともあります。写真で成功できなくても最悪なにか逃げ道があるってことを証明したくて、何回か足を運びました。日本なら最悪なんとかなるかなって。
そんな風に粘ったかいもあって、担当する撮影がモノクロからカラーへ、3cm大から10cm大ヘ。そして巻頭の大きなページの撮影になり、やっとフォトグラファーらしい活躍ができるようになったのが27歳。初めて掛け持ちだったバイトを辞めて、写真一本で生活できるように。そしてついに念願だった表紙を任せてもらえるようになりました!」
———ここから一気に道が開けたんですね!?
「いや、私も“ここでめでたしめでたし!”のはずだったんですが……この4年後にいったんすべての仕事を失うことになってしまったんですよ(涙)」
妊娠&出産で仕事が一転! 人気写真集が誕生するまで
「当時は出産を経験したフォトグラファーはレア。だからまっ先に浮かんだ感情はうれしいよりも不安。実際にギリギリまで仕事を続けても出産した途端、それまでの仕事がゼロになりました」
———そんなピンチをどう切り抜けたんですか?
「妊娠中に雑誌だけでなく、もっと心にも形にも残るような写真集を出したいと思ったんです。そこで元々撮り溜めていた『寝起き女子』の作品をカラーコピーして簡単な製本をして編集部に営業に行き、それが出版のきっかけに」
———その初写真集を出版したのが8年前。育児を両立しながら活動されてきたんですよね。
「育児に関しては実は反省点もあって。“仕事と育児を両立できる女性がカッコイイ〟という固定概念からパワープレーで乗り切ってしまったし、好きなことを両立するなら苦労は仕方ないと思い込んでいたんです。今なら『もっと周りに頼っていいし、その方が好きな写真を続けやすいよ』と、その頃の自分に言ってあげたいくらいです」
———では、これからの目標はありますか?
「ここ数年で自分の強みも分かって。私はオシャレな写真では勝負できないけれど、一般の人のありのままを美しく撮ることができる。それを生かしてニューボーンからウェディング、そして遺影まで撮れるフォトグラファーになりたいです。写真館を開くのもひとつの夢ですね」
———最後に好きを仕事にしたい皆さんへ一言!
「人の意見ではなく自分で選ぶことが大事。そして苦労が多かったからこそ、“諦めなければ夢は叶う”なんて無責任は言えません。続けることも諦めることも自分の勇気だと思います!」
花盛さんにとって仕事とは??
「これはとても悩むテーマですね! うーん……でも仕事は私の存在意義を感じられるというか、カメラマンをやっているから自分を肯定できる瞬間が多いなと感じています」
花盛さんのとある1日に密着!
2人の男の子のママでもある花盛さん。平日は雑誌や写真集、WEBコンテンツ、さらに個人の撮影まで目一杯仕事をして、金曜の夜だけは友人を招いて夕飯とお酒を楽しむ。土日は仕事をオフにして家族の時間にしているそう。
05:30|早起きして長男を起こしたら怒涛の一日がスタートします
毎日5時半に目覚ましをかけていて、まずは長男を起こしてからメイク。犬の散歩をしたら次は次男を起こして、家族みんなで朝食を食べるのが朝のルーティン。
8:00|撮影がスタート! 今日は雑誌と個人撮影の2本立て
一本目は広告の撮影で都内のハウススタジオで撮影。午後は事務所兼スタジオに戻って個人のポートレート撮影。スタジオは私の“大好き”が詰まった空間。
15:30|事務所でPCと向き合いデータのレタッチ等の作業
写真を撮影したら終わりではなくそこからレタッチや本データにして納品するまでがフォトグラファーのお仕事。午後はデスクワークにあてることが多いです。
19:00|金曜の夜は週に一回限定の楽しい時間が待っています!
帰宅したら犬の散歩がてら息子のお迎えへ。お部屋をさっとお掃除したから、友人を招いて一緒に夕飯を。この日だけは時間をあまり気にせずお酒もいただきます。
22:00|楽しい週末に向けておやすみなさい!
月〜木は21時には寝るんですが金曜の夜だけは夜ふかし。土曜日は基本仕事を入れずゴロゴロしたり読書をし、日曜夕方から徐々に社会復帰(笑)するのが習慣。
輝いているあの人に密着&インタビュー!フリーランスPR・上枝みどりさん >
Gina 2022 Summer
Photo_Tomokazu Ose Edit&Text_Kanako Sato ReEdit_Ayaka Ono〈Gina〉